コンタクトセンター
コンタクトセンターシステムに必要な機能とは?仕組みやクラウド・オンプレミスなど選び方のポイントを解説
コンタクトセンターシステムは、さまざまな電話業務を円滑に行うのに必要不可欠なツールです。コンタクトセンターシステムを導入することで、効率的な業務運営のほか、顧客満足度の向上などを実現することができます。この記事では、コンタクトセンターシステムに求められる主要な機能、選び方のポイントについて解説します。コンタクトセンターシステムの構築を予定されている方はぜひご確認ください。
コンタクトセンターの役割と必要性
顧客との関係構築
コンタクトセンターは、顧客との対話を通じて信頼を築き、企業のファンを育てる役割を持っています。 機能や価格での差別化が難しい現代、応対品質やコミュニケーションが顧客ロイヤルティを大きく左右するためです。一つ一つの応対がSNS等を通じて企業イメージに直結するため、コンタクトセンターの重要性は、近年より増しています。
顧客の声を収集し、サービスの改良に生かす
電話、メール、チャットなど多様なチャネルから集まる顧客の生の声(VOC)は、事業成長のヒントが詰まった貴重な資産です。収集した声は、以下のようなアクションに繋がります。
- 製品・サービスの改善
- 新たな機能の開発
- WebサイトのFAQコンテンツの充実
しかし、「集めるだけ」では顧客の声を資産に変えることはできません。私たちは、NTTグループが長年培った分析ノウハウを活かし、膨大なVOCデータから本質的な課題やニーズを抽出します。分析結果を基にした具体的な改善提案まで行い、貴社の事業成長を力強くサポートすることが可能です。
コンタクトセンターシステムとは?現代のシステムに求められる要素と種類
コンタクトセンターシステムの概要
コンタクトセンターシステムとは、電話とパソコンを結合し、電話業務を効率化するためのシステムです。複数のツールで構成されているのが特徴で、「大量の受発信をスムーズに処理する」「オペレーターが必要な顧客情報や履歴を即座に確認できる」など、電話業務の形態や規模に合わせて、さまざまな機能が搭載されています。中には、AIを用いた対応品質の改善が可能なモデルもあり、オペレーターの教育や顧客満足度の向上にも役立てられています。コンタクトセンターの重要性が以前よりもさらに高まりつつある現代、架電・受電業務を日常的に行う企業に欠かせないシステムといえるでしょう。
コンタクトセンターを取り巻く現状
近年、コンタクトセンターへの問い合わせ内容は以前より多岐にわたっています。製品・サービスの使い方やトラブル対応といった基本的な内容だけでなく、技術的知識を必要とする内容も増えており、オペレーターに高度な専門知識や問題解決能力が求められるようになってきました。
また、災害時や緊急時に備えたBCP(事業継続計画)対策が進んでいることもあり、多くのコンタクトセンターがリモートワークを導入しています。これに伴い、リモート環境での人材管理やシステム運用の効率化が大きな課題となっています。
その結果、オペレーターが「業務が多岐にわたるため難易度が高すぎてついていけなかった」「クレーム対応が辛い」「研修と実際の現場での業務に大きな隔たりがあり、思っていた仕事内容と異なっていた」といったストレスを抱えるようになり、多くのコンタクトセンターは高い離職率という慢性的な悩みを抱えています。コンタクトセンターシステムは、このような課題の解決に欠かせないシステムとして注目を集めています。
構成する主要システム(CRM・CTI・FAQなど)
コンタクトセンターは、個別のツールをただ導入するだけでは機能しません。顧客体験(CX)を最大化するためには、各システムを連携させて全体設計を行うことが不可欠です。 ここでは、その中核をなす主要なシステムをご紹介します。
| システム | 主な機能 | 導入効果 |
|---|---|---|
| CRM(顧客関係管理) | ・ 顧客情報、購入・応対履歴の一元管理 | 顧客一人ひとりに合わせたパーソナライズされた応対を実現し、顧客満足度を向上させる。 |
| CTI(コンピュータと電話の統合) | ・ IVR(自動音声応答) ・ ACD(着信呼自動分配) ・ 着信時の顧客情報ポップアップ |
入電の適切な振り分けや情報表示により、応対の迅速化と効率化を実現する。 |
| FAQ(よくある質問) | ・ 顧客からの頻出する質問と回答の集約 ・ オペレーターの応対ナレッジ |
顧客の自己解決を促進し入電数を削減するとともに、オペレーターの応対品質を均一化する。 |
コンタクトセンターシステムの種類は?
コンタクトセンターシステムの種類をご紹介します。
提供形態の種類
コンタクトセンターシステムの提供形態には、オンプレミス型とクラウド型があります。それぞれの特徴は以下です。
・オンプレミス型
オンプレミス型は、自社内にサーバーやハードウェアを設置してイチからシステムを構築する形式です。データの管理を完全に自社で行うため、高いセキュリティが求められる金融業界や医療業界などに適しています。しかし、初期導入のコストが高いことや、運用・保守にかかる費用、さらにシステム更新や拡張に時間とコストがかかるといった課題があります。
・クラウド型
クラウド型は、クラウド上にベンダーが構築しているシステムをインターネット経由で利用する形式です。サーバーの設置やメンテナンスが不要で、導入時のコストを抑えられるため、導入しやすいのが特徴。ただし、セキュリティ強度がベンダーに依存する、カスタマイズに限界がある、ネット環境が不安定な場合は業務に影響が出るといった課題が考えられます。
業務形態の種類
コンタクトセンターの業務形態は、主に以下の2種類に分類されます。
・アウトバウンド型(架電業務)
アウトバウンド型は、オペレーターが顧客に対して電話をかける形態です。商品の販売促進・アンケート調査・キャンペーンの案内・電話営業・テレアポなどを行う企業が該当します。アウトバウンド型に適したシステムには、自動発信機能や効率的なリスト管理機能などが搭載されています。
・インバウンド型(受電業務)
インバウンド型は、顧客からの電話を受ける形態です。問い合わせ対応・注文受付・カスタマーサポート・返金交換対応などを行う企業が該当します。インバウンド型に適したシステムには、顧客情報を瞬時に表示できる機能や、過去の対応履歴を管理できる機能が搭載されています。
コンタクトセンターシステムに必要な機能と仕組み
コンタクトセンターに必要な機能と仕組みについてご紹介します。
コンタクトセンターシステムに必要な基本機能は?
コンタクトセンターシステムには、顧客対応を効率的かつスムーズに進めるために、以下のような機能が搭載されています。
PBX
PBXとは、企業内の電話回線を一括管理する仕組みです。外線・内線などすべての回線と電話機を一括で管理してコントロールできるようにします。コンタクトセンターシステムの中核を担う機能です。
CRM
CRMは、顧客の情報を一元管理するシステムです。顧客の名前や連絡先だけでなく、過去の問い合わせ内容や対応履歴・購入履歴なども記録されます。この情報を活用することで、顧客一人ひとりに合わせたパーソナライズされた対応が可能になり、満足度の向上につながります。
CTI
CTIは、電話とコンピューターを連携させるツールのことです。オートコール機能・プレディクティブコール機能・リスト管理機能のほか、モニタリングシステムなど、多種多様な機能が搭載されています。また、CRMと連携させることで「顧客から電話がかかってきた際に顧客情報が自動で表示する」といったことも可能です。
ACD
ACDは、多数の電話を効率よく処理する仕組みです。たとえば、「空いているオペレーターに電話をつなぐ」「特定の相談内容は専門の担当者につなぐ」といった役割を自動的に行います。この仕組みのおかげで、顧客はスムーズに担当者と話せるようになります。
IVR
IVRは、顧客が電話をかけた際に自動音声で案内を行うシステムです。たとえば、「〇〇に関するお問い合わせは1を押してください」という案内を流し、顧客が用件に応じた番号を選ぶことで適切な担当者や部署につなげることができます。また、営業時間外でも電話対応が可能になります。
RPA
RPAは、業務の中で繰り返し行われる作業を自動化する技術です。たとえば、顧客情報のデータベースへの入力や、決まったフォーマットでのメール送信を自動で行えます。このような単純作業をシステム化することで、オペレーターはより重要なコア業務に集中できるようになるでしょう。
FAQ
FAQは、顧客からよく寄せられる質問とその回答をまとめたデータベースです。オペレーターはこれを参考にすることで、素早く正確に回答できます。また、顧客がFAQを自分で見られるようにしておけば、電話対応の数が減るため、オペレーターの負担を軽減できるでしょう。
チャットボット
チャットボットは、AIを使って顧客と自動的に会話をするシステムです。たとえば、ウェブサイトやLINEで「営業時間は何時ですか?」という質問があった際に、チャットボットを利用することですぐに返答できます。よくある質問への問い合わせをチャットボットに任せれば、オペレーターの負担が軽減され、業務効率も上がるでしょう。
通話録音装置
通話録音装置は、顧客とオペレーターの会話内容を記録する機能です。この録音データは、トラブルが発生した場合の確認や、オペレーターの教育・育成に活用できます。対応品質の向上に欠かせない重要なツールといえるでしょう。
VDI
VDIは、オペレーターがどこからでも業務を行えるようにする仕組みです。インターネット回線を使って会社のシステムやデータに安全にアクセスできるようになるので、リモートワークや在宅勤務を採用したい場合に欠かせません。
必要な不可欠なツールは?コンタクトセンターシステムの仕組み
コンタクトセンターの中心的な役割を担う基幹システムは、PBX(外線と内線をつないだり、内線同士をつないで転送する)・CTI(電話とパソコン、その他のツールを連携させる)・CRM(多種多様な顧客情報を管理・保存する)の3つです。これらがなければコンタクトセンターシステムを成立させることができません。
コンタクトセンターシステムを選ぶときのポイントは?
では、自社に合ったコンタクトセンターシステムはどのようにして選べばよいのでしょうか?ここでは、一般的な選び方についてご紹介します。
提供形態を選ぶ(オンプレミス型・クラウド型)
コンタクトセンターシステムの提供形態には、オンプレミス型とクラウド型の2つがあります。自社のニーズに最も適したものを選べるよう、それぞれの特徴や外部システムとの連携性・操作性などのポイントを押さえておきましょう。
オンプレミス型がマッチする企業は?
オンプレミス型は、自社のサーバーにシステムを設置して運用する形態です。このタイプは、セキュリティ対策を強化したい企業やカスタマイズ性を重視する企業に向いています。特に、大規模なコンタクトセンターやデータを外部に出すことを避けたい業種、たとえば、金融業界や医療分野などがマッチしやすいでしょう。
クラウド型がマッチする企業は?
クラウド型は、オンライン上で提供されるクラウドサービスを利用してコンタクトセンターを運用する形態です。初期費用が抑えられ、スピーディに導入できるのが魅力。遠隔地からでもアクセス可能なため、在宅勤務や多拠点での運用にも適しています。中小企業や短期間で柔軟に運用を開始したい企業にも最適です。また、最近ではセキュリティレベルが高い製品が登場しているため、大規模コンタクトセンターや金融・医療などの分野にも導入されています。
業務形態を選ぶ(アウトバウンド型・インバウンド型)
自社の業務形態に合わせて、導入するシステムを選定しましょう。アウトバウンド型とインバウンド型の違いをご紹介します。
アウトバウンド型がマッチする企業は?
アウトバウンド型は、企業から顧客に電話をかける「架電業務」を中心とした形態です。このタイプのシステムには、顧客リストの管理、効率的な架電をサポートするオートコール機能、通話結果の自動記録機能などが搭載されています。テレマーケティングや販売促進・リサーチ調査などに向いており、効率よく顧客接点を増やしたい企業に適しています。
インバウンド型がマッチする企業は?
インバウンド型は、顧客からの問い合わせや相談を受ける「受電業務」を中心とした形態です。顧客情報をオペレーターのモニターに瞬時に表示する機能、問い合わせ内容に応じた適切な部門への自動転送を行うACD(自動着信分配)機能、音声案内を提供するIVR機能などが搭載されています。この形態は、カスタマーサポートや問い合わせ窓口を運営する企業に適しています。
既存の外部システム(CRM・SFA)との相性
コンタクトセンターシステムを選ぶ際には、CRMやSFAといった既存の外部システムとの相性も確認しておきましょう。コンタクトセンターシステムをCRMやSFAと連携すると、顧客情報を一元管理することが可能になります。たとえば、問い合わせ内容をCRMに自動で記録したり、営業活動データを活用して顧客のニーズに合った提案をしたりすることが可能です。
反対に、既存の外部システムと連携できない場合、せっかくコンタクトシステムを導入していても手作業でのデータ入力が必要になるなど、業務効率が低下する恐れがあります。場合によっては、導入したシステムが無駄になってしまう可能性もあるため、事前の確認が重要です。このようなトラブルを防ぐために、既存システムとスムーズに連携できるコンタクトセンターシステムを選ぶことが重要です。
操作性や視認性の高いシステム
このほか、操作性や視認性に優れたシステムを選ぶことも大切です。オペレーターがシステムをスムーズに操作できれば、作業効率が向上し、ミスの削減にもつながります。また、視認性の高い画面デザインであれば、必要な情報を素早く見つけられるため、顧客対応がさらにスムーズに。新人オペレーターも仕事を覚えやすくなり、教育・育成コストの削減も実現できます。
効率化・自動化に対応するシステム
現代のコンタクトセンターを取り巻く課題として、人手不足や離職率の高さがあります。これらの課題を解決するには、効率化や自動化に対応したシステムが欠かせません。自動受発信・チャットボット・自動入力機能などな、「人の仕事を減らせる機能」を念頭に置いてシステムを探してみてください。また、AIを用いた応対品質の自動評価システムなど、マネジメントコストを軽減する機能を搭載したモデルもおすすめです。
導入メリット・ステップ・費用
メリット:顧客満足度・業務効率など
顧客満足度の向上
顧客情報の一元管理や、トークスクリプト、回答事例の共有により、オペレーターは迅速かつ質の高い対応が可能になります。これにより、対応漏れや重複対応を防ぎ、顧客満足度を高めます。
業務の効率化
メールのテンプレート化や、顧客情報入力の自動化、ACD(着信呼自動分配装置)による効率的な振り分け機能などで、オペレーターの負担を軽減し、全体の対応スピードと効率が向上します。
問い合わせ件数の削減
FAQをWebサイトやアプリに掲載することで、顧客自身が問題を解決できるようになり、電話やメールでの問い合わせ件数を減らすことができます。検索履歴を分析すれば、ニーズの高い情報からFAQを充実させ、さらなる問い合わせ削減に繋がります。
成約率の向上とクレームの防止
経験豊富なオペレーターへの優先的な着信割り当てや、スーパーバイザーによる通話モニタリングとリアルタイムでのサポートにより、成約率の向上やクレーム発生の防止が期待できます。
導入ステップと注意点
導入ステップ
コンタクトセンターのシステムは、一度にすべて導入するのではなく、チームの状況や課題に合わせて段階的に導入するのが効果的です。 例えば、チームの立ち上げ初期で問い合わせが増加している場合は、まず問い合わせ管理システムを導入して対応履歴を共有し、業務の属人化を防ぐことが重要です。 問い合わせ内容の傾向が見えてきたら、次はFAQシステムの導入を検討します。顧客自身がよくある質問の答えを見つけられるようにすることで、問い合わせ件数の削減が期待できます。 また、システムを段階的に導入する際は、将来的な連携を考慮することが重要です。CRMとCTIのように、システム同士を連携させて初めて実現する機能(例:着信時に顧客情報を自動表示する機能)もあるため、導入前に既存システムとの連携可否やAPIの仕様などを確認しておくとスムーズです。
注意点
コンタクトセンターの運営には、自社の課題や目的に合ったシステムを適切に選ぶことが不可欠です。すべてのシステムを一度に導入するのではなく、必要な機能を優先的に取り入れましょう。 また、将来的な事業拡大や機能追加に対応できるよう、拡張性の高いサービスを選ぶことも重要です。
導入費用の目安
コンタクトセンターシステムの導入費用は、クラウド型とオンプレミス型で大きく異なります。 クラウド型は、比較的安価で導入できるのが特徴です。初期費用は約30万円から、月額費用は約10万円からが相場で、小規模な運営を始める企業に適しています。 一方、オンプレミス型は、自社でのサーバー設置が必要なため、クラウド型よりも高額になります。導入費用は100万円以上、さらに月々2〜3万円の運用費用がかかります。別途パッケージ費用が必要な場合もあります。
自社に合った選定条件の洗い出し
現代のコンタクトセンターは、電話だけでなくインターネット上のサービスも利用して構築されます。そのため、自社の業務に最適なシステムを選ぶことが重要です。たとえば、顧客からの問い合わせを受けるインバウンド型では、IVR(自動音声応答)とACD(着信呼自動分配)を連携させて効率的に電話を振り分ける機能が役立ちます。一方、こちらから顧客に電話をかけるアウトバウンド型では、顧客情報と連携したCRMシステムがコールの効率を高めます。このように、コンタクトセンターを導入する際は、事前に自社のニーズをしっかりと把握し、それに合ったシステムを計画的に準備することが成功の鍵となります。
まとめ
コンタクトセンターシステムの導入は、架電・受電業務の効率化・自動化に欠かせません。コンタクトセンターシステムを選ぶ際には、提供形態や業務形態をはじめ、外部システムとの連携性、操作性、自動化機能のバリエーションなど、多角的な視点で検討することが重要です。コンタクトセンターシステムをお探しの方は、ぜひ今回ご紹介した内容を参考にしてみてください。
ProCX編集部
NTTマーケティングアクトProCX