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コールセンターの分析とは?分析の目的と成功する実践方法を解説
コールセンターの運営では、日々多くの顧客対応が行われています。電話応対の品質や顧客満足度を高めるためには、データを活用した「分析」が不可欠です。この記事では、コールセンター分析の目的や得られるメリット、実際の分析手順までをくわしく解説します。効率化や顧客体験の向上を目指す企業は、ぜひ参考にしてください。
コールセンター分析とは?分析によって得られるメリットは?
コールセンターの各指標を分析することによって、どのようなメリットが得られるのでしょうか?ここでは、コールセンター分析によって得られるメリットについてご紹介します。
品質向上、運営効率改善、商品/サービス改善
オペレーターごとの応対品質をデータで可視化することで、個々のスキル差を把握できます。これにより、教育計画の立案やマニュアルの改訂を行い、均一で高品質な応対を実現できます。
また、着信数やAHT(平均処理時間)などの指標を分析することで、混雑する時間帯や対応のボトルネックを把握し、シフトや人員配置を見直すことができます。結果として運営全体の効率化につながります。
顧客から寄せられる問い合わせやクレームを分析し、商品やサービスの改善点を明確にできるというメリットもあります。このような客観的な意見を分析することで、新しい商品企画や既存サービスの改良に役立てられます。
コスト削減、対応品質向上、顧客ニーズの把握
業務プロセスのムダや重複を排除することで、処理時間の短縮や人件費の最適化など、直接的なコスト削減効果も期待できます。
また、分析結果をもとに応対スクリプトやFAQを改善すれば、オペレーター間で対応を標準化でき、応対品質のばらつきを減らすこともできるでしょう。
問い合わせ内容や顧客の行動データを深掘りできるのも、分析によって得られるメリットのひとつです。顧客が抱える課題や潜在的なニーズは、マーケティング施策や新商品企画のデータとしても活用でき、企業全体の戦略立案に貢献します。
コールセンター分析の基本的な方法は?
コールセンター分析の基本的な方法や流れをご紹介します。
・目的設定とデータ収集 まずは「何を改善したいのか」を明確にする目的設定から始めます。 例えば「顧客満足度を上げたい」「応答率を改善したい」など、具体的な目標を設定しましょう。 目的が定まったら、通話記録、応答率、平均処理時間、CSAT(顧客満足度)調査結果など、必要なデータを正確に収集し整理します。データの種類や取得方法を事前に決めておくことが、後の分析をスムーズに進めるポイントです。
・分析・可視化・共有 収集したデータは統計手法やBIツールを活用して分析します。 例えば、ピーク時間帯をグラフ化したり、オペレーターごとの応対時間を比較したりすることで、課題が一目でわかるようになります。 分析結果はレポートやダッシュボードにまとめ、管理者や現場のスタッフと共有します。チーム全体で現状を把握することで、改善策の検討がより具体的かつ効果的になります。
・改善施策とPDCAサイクル 分析で見つかった課題をもとに、オペレーション改善や教育計画、システム改修などの施策を実行します。 重要なのは、結果を単発で終わらせず「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)」のPDCAサイクルを回し続けることです。 定期的にデータをモニタリングし、施策の効果を検証しながら次の改善策を練ることで、持続的な品質向上と効率化が可能になります。
コールセンター分析は、単なるデータ集計ではなく、顧客満足度の向上や業務効率化、コスト削減など多方面の効果をもたらします。明確な目的を設定し、適切なデータを収集・分析して改善サイクルを回すことで、コールセンターは企業の成長を支える重要な戦略拠点となります。
主要なコールセンターの分析手法と特徴
コールセンター分析にはさまざまなアプローチがあります。ここでは代表的な4つの分析手法と、それぞれの特徴・課題・実践のポイントを詳しくご紹介します。
KPI分析とは?
KPI(重要業績評価指標)分析は、コールセンター運営の「健康状態」を把握する基本的な手法です。
代表的な指標には、応答率、AHT(平均処理時間)、放棄呼率、サービスレベル(一定時間内に応答した割合)などがあります。 これらを定期的に測定することで、業務効率や顧客満足度を客観的に評価し、改善施策を立案できます。
一方で、多くのセンターでは「指標の定義があいまい」「KPIが多すぎて優先順位が不明確」といった課題が見られます。 実践ポイントとしては、経営目標や顧客体験に直結するKPIを絞り込み、現場が理解しやすい形でダッシュボード化することが重要です。
VOC(顧客の声)分析とは?
VOC(Voice of Customer)分析は、顧客から寄せられる意見や要望を体系的に整理し、サービスや商品改善につなげる手法です。
問い合わせの内容やアンケート結果、SNSの投稿などを収集し、共通する不満やニーズを抽出します。 例えば「同じ不具合報告が増えている」「特定商品の質問が急増している」といった傾向を早期に把握し、製品改良やFAQ強化に活かせます。
課題としては、データ量が膨大になりやすく、人手での分類・分析に時間がかかる点があります。AIやテキストマイニングツールを活用して分類を自動化し、定期レポートに落とし込むことで、作業時間を効率化しましょう。
コールリーズン分析とは?
コールリーズン分析は、顧客が問い合わせを行った「理由」を詳細に分類し、業務改善に活用する方法です。
理由別に件数を数値管理することで、特定の問い合わせが増えている背景を素早く把握できます。AHT(平均処理時間)や応答率と組み合わせれば、特定の理由に対して処理時間が長い、もしくは異常値が出ているといった課題を特定できます。
その分析結果は、シフト調整やオペレーターのスキル配分、教育内容の見直しに役立てられます。コールリーズン分析を実践する際のポイントは、理由コードの設計を細かくしすぎないことです。過剰な分類は入力ミスやデータのばらつきを招くため、実用性とのバランスを考慮しましょう。
トーク内容・テキストマイニング分析とは?
通話記録をテキスト化し、キーワードや話題の傾向を抽出する高度な分析手法です。
音声認識技術を用いて通話内容を文字起こしし、頻出語や感情の傾向を解析します。 クラスタリング分析などを用いることで、顧客の共通課題や潜在的ニーズを可視化することも可能です。
また、トークのリアルタイム分析を行うことで、会話中の感情の高まりを検知することで、スーパーバイザーが即介入できる体制を構築し、オペレーターの心理的な負担を軽減することもできます。
KPI・VOC・コールリーズン・テキストマイニングといった分析手法は、それぞれ得られる成果や運用コストが異なります。自社の目的に合った手法を組み合わせ、定期的に見直しながら運用することで、コールセンターの品質向上と顧客満足度の最大化を実現できます。
コールセンター分析に必要なデータとツールは?
ご紹介したコールセンターの分析を効果的に行うためには、正確なデータ収集とそれを活用できるツールの導入が欠かせません。ここでは、主な分析対象データと有効なツール・仕組みについて解説します。
主な分析対象データとは?
コールセンター分析で扱うデータは多岐にわたります。分析対象の主なデータとしては以下があります。
・コールログ(通話記録) 着信時間、通話時間、応答率、放棄呼率など、オペレーションの基礎情報を確認できます。
・アンケート結果 CSAT(顧客満足度)やNPSなど、応対後の顧客評価を数値化して改善ポイントを把握します。
・モニタリング記録 スーパーバイザーによる応対評価やフィードバックを記録したデータは、教育計画や品質管理に役立ちます。
・システムログ IVR(自動音声応答)やチャットボット、Webフォームなど、複数チャネルで発生した操作履歴や遷移データも重要です。
さらに、顧客属性や購買履歴との連携を行えば、年代・地域・購入状況別のセグメント分析が可能になり、ターゲットごとのニーズを可視化できます。これらのデータは蓄積するだけでは活かせません。
フォーマットの統一やクレンジングなどの整備を行い、「すぐ分析に使える状態」に保つことが成果につながります。
有効なツール・仕組み紹介
効率的にデータを収集・分析するには、システム選びも重要です。 分析に必要な主な機能としては以下があります。
・CTIやCRM 通話履歴・顧客情報を自動的に記録し、問い合わせ内容や応対状況を一元管理できます。
・分析支援機能 通話時間や応答率を自動で集計して一覧表示するレポート機能、録音データを用いた評価機能、リアルタイムでのアラート表示などが代表的です。
【ツールの選定ポイント】 小規模センターではExcelやGoogleスプレッドシートを活用した基本分析でも効果を上げられます。 中〜大規模では、CRM連携やBI機能を備えた専用SaaSツールを利用することで、集計作業を自動化し分析スピードを大幅に向上できるでしょう。
「現場のオペレーターや管理者が扱いやすいか」「既存システムと連携できるか」「将来的な拡張性があるか」をチェックし、自社規模や目的に合ったツールや仕組みを検討しましょう。
コールセンター分析を成功させるには、データを「正確かつ使いやすく」管理し、それを活かせるツールを選ぶことが重要です。コールログや顧客属性を適切に整備し、CTI・CRMやBIツールを活用すれば、スピーディーで精度の高い分析が可能になり、顧客満足度向上や業務効率化に直結します。
コールセンター分析を実行するステップと成功のコツを解説!
コールセンター分析を効果的に進めるためには、明確な手順と現場全体での意識共有が欠かせません。ここでは、理想的な分析サイクルと注意すべきポイントを詳しく解説します。
分析の進め方ステップ
コールセンター分析は、以下のサイクルで進めるのが理想的です。
1. 目的設定 まず「何を改善したいのか」を明確化します。顧客満足度向上、応答率改善、コスト削減など、具体的なゴールを設定しましょう。
2. 仮説立て 目的達成のために、どの指標が改善の鍵になるかを仮説として設定します。たとえば「夜間の応答率が低いのは人員不足が原因」といった仮説です。
3. データ収集 仮説検証に必要なデータ(コールログ、KPI指標、顧客満足度調査など)を正確に収集します。CTIやCRMを活用すると、データを自動的に蓄積・整理でき、分析の効率が上がります。
4. 可視化 収集したデータをグラフやダッシュボードで見える化します。可視化により現状の課題が一目で把握でき、改善策の検討がしやすくなります。
5. 評価・改善 分析結果をもとに施策を実行し、効果を評価します。PDCAサイクルを回しながら継続的に改善することが重要です。
また、定期的なKPIモニタリングを行い、仮説の妥当性を検証し続けることで、変化に即応できる体制を維持できます。
異常値が出た場合は、一時的な要因か構造的な問題かを切り分けて確認し、再発防止策を検討することが大切です。
コールセンター分析で注意すべきポイントは?
コールセンター分析を成功させるには、以下の点に注意する必要があります。
・データの正確性と期間の整備 データが欠落していたり、期間がバラバラだったりすると、分析結果が信頼できません。収集方法を統一し、常に最新のデータを確保する仕組みを整えましょう。
・応対時間短縮と品質のバランス 業務効率化を重視するあまり、応対時間の短縮ばかりを追求すると、顧客体験や対応品質が低下するリスクがあります。KPI設定の際は、顧客満足度や一次解決率など品質指標も同時にチェックすることが重要です。
・分析目的の明確化と全員での共有 分析結果は管理者だけでなく、現場オペレーターや関係部門全員が理解できるように共有します。目的や改善目標を全員が認識していることで、現場の協力が得やすく、施策の定着率も高まります。
コールセンター分析は「目的設定→仮説立て→データ収集→可視化→評価・改善」というサイクルを継続することで効果を発揮します。正確なデータ整備と品質と効率のバランスを意識し、チーム全体で目的を共有して成果につなげていきましょう。
コールセンター分析の活用事例は?
コールセンター分析は、業務改善だけでなく、サービス価値の向上や新規ビジネスの創出にもつながります。ここでは、実際の簡単な活用事例と活用方法について紹介します。
コールセンター分析の活用事例
・事例1:応答時間短縮によるコスト削減と生産性向上 ある企業では、通話記録とオペレーター別のAHT(平均処理時間)を分析し、ピーク時のボトルネックを特定。結果、シフトの再編成とFAQの改善によって応答時間を平均15%短縮。これにより人件費を削減するとともに、オペレーターの生産性向上にも成功しています。
・事例2:問い合わせ傾向把握からマニュアル整備や教育強化 コールリーズン分析により「特定製品の操作方法」に関する問い合わせが多いことを発見。分析結果を基にマニュアルを改訂し、オペレーター教育を強化したことで、同じ問い合わせ件数が約30%減少し、応対時間の短縮と顧客満足度向上を同時に実現しました。
・事例3:VOC・テキストマイニングで製品改善や新サービス開発に展開 VOC分析とテキストマイニングを活用し、顧客が頻繁に指摘する不具合や要望を体系的に抽出。これを製品開発部門に共有した結果、既存製品の改良だけでなく、新たなサービスプランの開発にもつながっています。
コールセンター分析の今後の活用方法は?
今後は、テクノロジーの進化によりコールセンター分析の可能性がさらに広がります。主な活用方法としては以下の2つがあります。
・生成AIの活用による工数削減や高度な分析(例:対話の質・要約など) 音声認識と生成AIを組み合わせれば、通話内容を自動要約し、対応の質をリアルタイムに評価できます。これによりスーパーバイザーの負担を軽減し、分析にかかる工数を大幅に削減できます。
・継続的な分析サイクルによる長期改善と業務刷新 定期的なKPIモニタリングと仮説検証を繰り返すことで、長期的な業務改善が可能です。単発的な施策ではなく、PDCAサイクルを継続的に回すことで、顧客体験を進化させ、センター全体の業務を刷新できます。
コールセンター分析は、コスト削減や顧客満足度向上にとどまらず、製品・サービスの革新や新事業の創出にも貢献します。
生成AIや高度な自動化技術を取り入れながら継続的に分析サイクルを回すことで、企業の成長を支える重要な経営資源となるでしょう。
まとめ
コールセンター分析は、業務効率化や顧客満足度の向上をはじめ、オペレーターの教育や離職率の抑制に至るまで、さまざまなメリットをもたらす手法です。
ただ、分析をスタートしてすぐに効果が出る訳ではないため、着実にPDCAを回しながら施策を進めていくことが必要です。
「分析を行いたいけどリソースが足りない……」「ノウハウがなく分析が行えない」という場合は、アウトソーシング・BPOの活用を検討してみてもよいでしょう。
ProCX編集部
NTTマーケティングアクトProCX