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コールセンターの課題とは?現場で抱える11の課題と解決策



コールセンターは、人手不足に代表されるように、さまざまな課題を抱える業界です。
自社で運営しているコールセンターでさまざまな課題があり、解決策を知りたい……とお悩みの方もいるでしょう。この記事では、現代のコールセンターが抱える11の課題とそれぞれの解決策についてご紹介します。
「人材・組織の課題」「業務運用・対応品質の課題」「システム・テクノロジーの課題」の3つの視点から、それぞれの課題と解決策を解説します。
コールセンターの人材・組織に関する課題と解決策

コールセンター運営において、人材確保や組織体制にはさまざまな課題が伴います。 ここでは、現場で多く見られる人事・組織面の主な課題と、それぞれの解決策について詳しく解説します。
1. 人手不足と離職率の高さ
【課題】 コールセンター業界では、採用活動が難航し、ようやく確保した人材も短期間で離職してしまうケースが多く見られます。
結果として、常に人手が足りない状態が続き、採用・研修にかかるコストや労力が無駄になりやすいことが大きな課題です。
特に新人オペレーターの教育負荷が高いことで、現場の人材確保・育成が追いつかない状況が発生しがちです。
【解決策】 ・eラーニングやマニュアル整備による教育の仕組み化 eラーニングのオンライン研修コンテンツや業務マニュアルを整備し、教育を標準化することで、担当者の負担を軽減しつつ、一定のスキル習得を可能にします。
・柔軟なシフト制や在宅勤務導入による定着率向上 働き方の多様化を進め、柔軟なシフトや在宅勤務を導入することで、離職防止に繋げます。特にワークライフバランスを重視した働き方改革は定着率改善に有効です。
・キャリアパスや表彰制度の導入でモチベーションを維持 昇進やスキルアップの明確なキャリアパスを設定し、努力を認める表彰制度を設けることで、オペレーターのモチベーション向上を図ります。
2. 応対品質のばらつき
【課題】 オペレーターの経験値やスキルに応じて、顧客応対の品質に差が出ることは、コールセンター運営上の大きなリスクです。
特にクレーム対応の場面では、不適切な対応が原因で顧客満足度が低下したり、企業イメージが損なわれたりする恐れがあります。
【解決策】 ・トークスクリプトの整備と更新 全オペレーターが一定の基準に従った対応ができるよう、実務に即したトークスクリプトを作成・更新し、現場で常に活用できるようにします。
・ロールプレイや定期研修によるスキルの均質化 定期的なロールプレイやOJT研修を通じて、実践的なスキルを身につけさせ、対応のばらつきを減らします。
・品質チェックシートやモニタリングによる指導体制の強化 品質管理担当者やSVによるモニタリング、評価チェックシートを用いた振り返り指導を行い、継続的に品質向上を図る体制を構築します。
3. オペレーターの健康とメンタル不調
【課題】 コールセンター業務は、顧客からのクレームや理不尽な要求を受けることも多く、オペレーターがストレスを抱えやすい環境です。
その結果、体調不良やメンタル不調を訴えるスタッフが増え、離職リスクや職場環境悪化につながることが深刻な課題となっています。
【解決策】 ・SVによるフォローアップ体制の整備 スーパーバイザー(SV)が日常的にオペレーターをフォローアップし、悩みを相談しやすい環境をつくることで、ストレス軽減を促します。
・ストレスチェックや産業医との連携 定期的なストレスチェックを実施し、産業医や専門機関と連携したカウンセリング体制を整えることで、早期のメンタル不調の発見と対応が可能になります。
・クレーム応対のマニュアル整備と心理的安全性の確保 クレーム対応時の具体的な対応マニュアルやトーク例を整備し、オペレーターが迷わず対応できる仕組みを作ります。また、心理的安全性を重視した組織文化の醸成により、安心して働ける環境づくりを推進します。
以上のように、コールセンターにおける人材や組織の課題には、現場に即した仕組みづくりと、オペレーターが安心して働ける環境整備が不可欠です。課題に応じた対策を講じることで、組織全体の生産性と顧客満足度の向上につながるでしょう。
なお、コールセンターの人手不足の課題に関しては以下の記事でくわしく解説しています。合わせて確認してみてください。
コールセンターの業務運用・対応品質に関する課題と解決策

コールセンターの運営では、人材だけでなく、業務運用や対応品質に関しても多くの課題が存在します。 ここでは、代表的な4つの課題と、具体的な解決策について詳しく解説します。
4. 電話が繋がりにくい・待ち時間の長さ
【課題】 問い合わせが集中する時間帯には、電話が繋がらずに顧客が不満を抱くケースが多く見られます。
結果として、顧客満足度が低下し、対応を待つ間のストレスが原因でクレームに発展することも。また、オペレーターにとっても負荷が高まり、業務効率の低下を招きます。
【解決策】 ・IVR(自動音声応答)やチャットボットの導入による自己解決の促進 IVRなど、問い合わせ内容を事前に自動で振り分けたり、FAQを自動回答したりする仕組みを導入することで、簡単な質問は自己解決できるようになります。これにより、オペレーター対応が必要な件数を減らし、待ち時間短縮につながります。
・ピークタイムに合わせたシフト調整と人員配置 問い合わせが集中する時間帯を分析し、事前にシフトや人員を最適化することで、混雑を緩和できます。的確な人員配置でオペレーターの負担も軽減できます。
・折返し対応の導入で待ち時間の不満を軽減 顧客に順番待ちを強いるのではなく、折返し電話予約を受け付けることで、待たせるストレスを軽減します。顧客の時間を尊重した対応が、満足度向上に直結します。
5. テレワーク体制の整備難
【課題】 近年進む在宅勤務ですが、コールセンターでは情報漏洩リスクや通信環境のトラブルが懸念され、整備が進んでいないケースも多くあります。
そのため、在宅勤務導入に踏み切れず、人員確保や柔軟な働き方が実現できていない現状があります。
【解決策】 ・クラウドPBXや仮想デスクトップの導入 クラウド型の電話システムや、仮想デスクトップ環境を活用すれば、自宅からでも業務システムを安全に接続することができます。このようなツールやテクノロジーを活用することで、社内と同じ業務環境が整えられます。
・VPN・二段階認証などのセキュリティ対策の強化 外部アクセスの際はVPN接続を義務化し、ID・パスワードだけでなくワンタイムパスワードなど二段階認証を併用します。このようなセキュリティ対策を行うことで、情報漏洩リスクを最小限に抑えられます。
・機器貸与やマニュアル整備による在宅支援 業務用パソコンやヘッドセットの貸与を行い、使用方法やトラブル対応をまとめたマニュアルを整備します。このような支援を行うことで、在宅勤務でもスムーズな業務遂行を可能にします。
6. 他部署連携不足
【課題】 営業・物流・開発などの業界では、他部署との情報共有が不十分だと、誤った情報提供や対応の遅れといったトラブルが発生しやすくなります。
このようなトラブルが発生すると、顧客からの信頼を損なってしまうほか、社内で不満が溜まってしまうことがあります。
【解決策】 ・社内チャットツール(Slack・Microsoft Teamsなど)でのリアルタイム連携 このような社内チャットツールと連携することで、メールよりも迅速にやり取りができ、情報共有のスピードが格段に向上します。電話対応後に社内の別部署と連携が必要な場合は、このような連携を検討するとよいでしょう。
・CRMの一元管理による情報共有の促進 顧客情報や対応履歴をCRMで一元管理すれば、誰でも最新の情報にアクセスでき、対応ミスや重複が防げます。部門を超えた情報共有の基盤としても有効な方法です。
・定例ミーティングやQ&A集の更新 部門横断で定期的に情報交換の場を設け、お互いの見解や認識に齟齬がないかをチェックすることが大切です。また、共有された内容や疑問点をQ&A集として更新・共有するのもよいでしょう。情報共有の文化を根付かせることで、部署間の連携不足を防ぐことができます。
7. 営業時間外対応の不足
【課題】 営業時間外に問い合わせを受け付けていないと、顧客からの不満や機会損失につながる場合があります。
特にECサイトやサブスクリプションサービスなどでは、夜間や休日の対応が求められることも多く、対応力不足がクレームの温床になるケースもあります。
【解決策】 ・IVRでのガイダンス・受付対応 営業時間外でもIVRを使って基本的な案内や受付を自動化。問い合わせ内容を記録し、翌営業日にスムーズに対応できる体制を整えます。
・有人チャット・チャットボットの活用 有人チャットの時間延長や、24時間稼働のチャットボットを設置することで、営業時間外も最低限の対応が可能に。顧客の不安や不満を軽減できます。
・BPO(夜間対応専門業者)の活用 夜間・休日対応を専門とするBPO・アウトソーシングのパートナーを活用することで、自社のリソースを使わずに対応品質を確保できます。コストと品質のバランスを見ながら、柔軟に外部委託を検討するのも有効です。
これらの課題と解決策を踏まえ、コールセンターの業務運用を見直すことで、顧客満足度の向上と、業務効率化の両立が実現できるはずです。
コールセンターのシステム・テクノロジーに関する課題と解決策

コールセンターでは、業務の効率化や顧客対応の質を高めるために、システムやテクノロジーの活用が不可欠です。
しかし、技術面でもさまざまな課題が発生しやすく、運用に悩む企業も多いでしょう。ここでは、主な4つの課題とその解決策について詳しく解説します。
8. チャネル多様化への対応
【課題】 顧客接点は、従来の電話だけでなく、メール・SNS・チャット・Webフォームなど多様化しています。
このような幅広いチャネルに個別対応をしていると、情報が分散し、対応漏れや作業工数の増加を招く恐れがあります。
システムや人員のリソースが不十分なまま、チャネルのみ広げてしまうと、結果的に離職や顧客満足度の低下を招く恐れがあります。
【解決策】 ・オムニチャネル対応可能なCRMの導入 すべてのチャネルの問い合わせを一元管理できるCRMを導入し、情報共有の漏れを防止します。オムニチャネル化により、どの窓口からの問い合わせでも統一した対応が可能になります。
・チャネルごとのガイドラインと対応手順を整備 チャネルによって求められる対応スタイルやスピードは異なります。それぞれの特性に合わせたマニュアルやガイドラインを整備し、対応品質を維持します。
・チャネル統合のためのシステム刷新 既存のシステムでは対応できない場合は、チャネル統合機能を持つ新システムへの切り替えを検討します。分散したシステム運用を統合することで、業務効率と管理体制を強化します。
9. システムによるミスや更新遅れ
【課題】 古いCTIやCRMを使い続けることで、システムエラーが頻発してしまう可能性があるほか、法改正・サービス変更に迅速に対応できないケースが増えています。このような原因で、顧客対応の質が下がり、社内の業務負荷も増加してしまうことがあります。
【解決策】 ・最新のクラウド型CRM/CTIへの移行 クラウド型であれば、常に最新のシステムが利用でき、法改正や新サービスにも柔軟な対応が可能です。拡張性も高く、機能が充実した製品であれば、用途に応じてオプションとして追加することもできます。
・定期的なシステムチェックとアップデート運用体制 定期的にシステムの稼働状況やエラー発生率をチェックし、必要に応じてメンテナンスやアップデートを行う体制を構築することも大切です。このような体制を敷くことで、コールセンターに活用するシステムのパフォーマンスが安定します。
・業務マニュアルとシステム仕様書の連携 業務マニュアルとシステムの操作仕様書を連動させることも大切です。変更があればすぐに更新を行い、最新の状態を保つことで、現場の混乱を抑えることができるほか、顧客対応も均一化しやすくなります。
10. KPI・KGIが活用できていない
【課題】 KPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)は設定されているものの、数値目標が単なる形骸化した管理項目になり、現場の改善や業務改革に結び付いていないケースがあります。結果、数字だけを追うようになり、現場の士気低下にもつながることがあります。
【解決策】 ・KPIを業務改善と連動させた設計に見直す KPIを業務改善や顧客満足度向上につながる指標に設計し直すことが大切です。形骸化したKPIを機能させるには、このような目標の見直しが欠かせません。
・KPIをリアルタイム共有し、PDCAを回す体制を構築 KPIの数値をリアルタイムで可視化し、オペレーターや管理者が常に確認できるシステムを構築します。目標の達成度をチェックしながら改善を繰り返し、PDCAサイクルを回すことが大切です。
・KPI達成だけでなく、応対品質など定性的な評価指標も併用 数値だけに頼らず、応対品質や顧客の声、CS(顧客満足度)評価なども指標化します。このような評価指標を定めることで、現場の努力が可視化され、バランスの取れた評価体制を構築できます。
11. 多言語対応・グローバル展開の遅れ
【課題】 インバウンド需要の高まりや越境ECの拡大により、英語・中国語をはじめとした外国語対応の必要性が増しています。しかし、対応できる人材が足りず、対応不可や誤対応によるクレーム発生が課題となっています。
【解決策】 ・多言語対応BPOサービスの導入 自社での対応が難しい場合は、多言語対応に特化したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用し、専門業者に委託するのも効果的です。一定のコストはかかるものの、自社のコールセンターをすぐに多言語対応にすることができます。
・翻訳AIツールやリアルタイム通訳ツールの活用 最新のAI翻訳ツールや、リアルタイム通訳サービスを活用することで、簡単なやり取りやFAQ対応が可能になります。
・FAQやチャットボットの多言語化 よくある問い合わせは多言語化したFAQやチャットボットでカバーする方法です。回答の自動化を進めることで、24時間対応やグローバル展開にも柔軟に対応できるようになります。
まとめ
コールセンターは、人手不足や応対品質のばらつき、業務運用・システム課題など多様な問題を抱えています。
抱えている課題ごとに対策は異なりますが、ひとつ共通点があるとすれば、「システムやAIなどを活用することによる自動化」をあげることができるでしょう。現状のリソースが限界に来ている場合は、システムやツール、AIなどの導入を検討しましょう。
また、このような対策が難しい場合は、BPOやアウトソーシングを活用するのもおすすめです。豊富な経験とリソースを持つ専門業者に業務を委託することで、さまざまな課題を一気に解決できる可能性もあります。

ProCX編集部
NTTマーケティングアクトProCX
