地方自治体

神戸市様

税に関する電話問い合わせに、 生成AIを活用したボイスボットが自動応答。 市民サービスの向上と 職員の負担削減を実現

課題・背景

  • 年間40~50万件の電話問い合わせを減らし、市民サービスの向上と職員の業務効率化につなげたい
  • 2028年度の「神戸市税務部コンタクトセンター(仮称)」の稼働に向け、知見を増やしたい
 

実施内容・導入の効果

  • VOC分析により問い合わせ内容を可視化し、ホームページのFAQを拡充
  • 生成AIを活用したボイスボットにより、市民の自己解決率を向上。職員による対応が減り、業務効率化・コスト削減を実現

 

概要

兵庫県神戸市税務部は、各種税金の課税、納税通知書や各種証明書の発行管理、市民からの相談対応など、多岐にわたる税務業務を担っています。市民の皆様から寄せられる問い合わせへの対応も、税務部の重要な業務。ですが、繁忙期は電話件数が急増し、職員の皆様は対応に多くの時間を割いていました。

そこでNTTマーケティングアクトProCXは、コールセンター運営で培ったノウハウをもとに、市民の皆様からの問い合わせ内容を分析。住民税に関する定型的な内容について、生成AIによるボイスボット(自動音声応答システム)を活用することで、市民の皆様の自己解決をサポートし、市民サービスの向上と職員の業務効率化を目指しました。VOC分析から実証実験の成果、今後の展望について、税務部の皆様にお話を伺いました。

竹内 信介様(写真前列右から1人目)
神戸市 行財政局 税務部 税務課 課長

木本 秀樹様(写真前列右から2人目)
神戸市 行財政局 税務部 税務課 係長

山本 惇貴様(写真前列左から2人目)
神戸市 行財政局 税務部 税務課

 

森井 雅靖(写真後列中央)
株式会社NTTマーケティングアクトProCX CXソリューション部 DCX推進担当 チーフコンサルタント

永井 雄紀 (写真後列右)
株式会社NTTマーケティングアクトProCX CXソリューション部 DCX推進担当 チーフプロデューサー

菅 晃規 (写真前列左から1人目)
株式会社NTTマーケティングアクトProCX CXソリューション部 営業部門 営業担当 主査

長谷川 航成(写真後列左)
株式会社NTTマーケティングアクトProCX CXソリューション部 営業部門 営業担当

※部署名・役職は取材当時(2026年6月)のものです

 

課題

税に関する年間40~50万件の問い合わせ電話を減らしたい

神戸市税務部では、市民からの税に関する問い合わせ電話が年間40~50万件にのぼっていました。特に、納税通知書が市民の皆様の元に届く4~6月は、納付方法や税額などに関する問い合わせが急増するため、対応する職員の負担軽減が課題となっていました。

山本様

生産年齢人口の減少が進む中、税務部では約400名の職員が電話問い合わせに対応しており、人に依存した運用を続けることに課題を感じていました。今後もサービスレベルを維持するためには、人手に頼らない仕組みづくりが必要です。その第一歩として、電話による問い合わせ件数を減らすことを目指しました。

市民の皆様に税に関する疑問・質問を自己解決していただくには、まずどのような問い合わせが寄せられているのかを正確に把握する必要があります。そこで、はじめに問い合わせ改善業務について公募いたしました。

竹内様

年間40~50万件という電話件数は、職員にとって大きな負担です。しかし同時に、それだけ多くの市民の皆様が疑問を抱えていることも意味しています。

私たちが目指したのは、単なる入電数の削減ではなく、市民サービスの向上です。自己解決できる環境を整えれば、電話をかける手間や待ち時間がなくなり、市民の皆様の利便性向上につながります。電話対応は平日の日中に限られるため、なかなか電話がつながらず、市民の皆様にご負担をおかけしていました。こうした状況を改善したいという思いも強くありました。

今回の公募に対し、NTTマーケティングアクトProCXでは、自社の強みでもあるVOC(Voice of Customer)分析をご提案しました。問い合わせ内容を可視化し、現状を把握すれば、市民の皆様にとって適切な自己解決手段を検討できます。併せて、神戸市のネットモニターを活用したアンケート調査も提案したところ、公募型プロポーザルで契約締結に至りました。

 

実施内容

VOC分析でお問い合わせ内容を可視化
定型的な質問には、AIボイスボットが自動応答

NTTマーケティングアクトProCXでは、問い合わせの通話内容をテキスト化したデータを預かり、VOC分析を行いました。その上で、ホームページ上で疑問を解決できるよう、Webサイトの改修やFAQ(よくある質問と回答)の改善を提案しました。

森井

問い合わせ内容を分析した結果、納税通知書の見方や納付方法、納期限など、定型的な質問が多いことがわかりました。また、平均通話時間と通話時間のばらつきを軸にした四象限マトリクスでさらに分析を進めたところ、通話時間が短く、回答内容にも大きな差がない一問一答型の問い合わせが、全体の6~7割を占めていることが判明したのです。つまり、多くの問い合わせは定型的な内容であり、適切な情報提供ができれば、市民の皆様自身で解決できる可能性が高いことがわかりました。

また、電話問い合わせに至るまでの市民の皆様の行動を知るために、神戸市様のネットモニター制度を活用したアンケート調査も実施しました。約5,000人の方にご回答いただいたところ、税に関する疑問が生じた際、約6割の方がまずWebサイトで情報を探していることがわかりました。一方で、「すぐに回答が見つかった」と回答した方は2割程度であり、市民の皆様はまず自己解決を試みるものの、必要な情報にたどりつけないケースが少なくないといった課題も見えてきました。

そこで、電話で多く寄せられているにもかかわらずFAQに掲載されていない質問や、市民が知りたい情報との間にギャップがあるFAQについて改善をご提案しました。併せて、FAQまでの導線や情報の探しやすさといったWebサイト全体のユーザビリティ向上についても提言しました。

 

 

VOC分析を根拠にボイスボットの導入を検討

ホームページのFAQ改善と並行し、NTTマーケティングアクトProCXが提案したのが生成AIによるボイスボットの導入でした。AIが自動音声で応答することで、職員の省力化を目指す取り組みです。

長谷川

毎月定例会を重ねる中で、「職員の電話対応件数を減らすためにはボイスボットが有効ではないか」という議論になりました。

近年はチャットボットも普及していますが、利用するにはWebサイトにアクセスする必要があり、電話をかけてこられる市民の皆様すべてをカバーできるわけではありません。一方で、ボイスボットは電話でそのまま案内できるため、自己解決を促進する有効な選択肢になり得ます。ちょうど生成AIの進化によって音声認識や意図理解の精度も向上していたことから、改善策のひとつとしてご提案しました。

永井

当時は今ほどボイスボットが普及しておらず、本格導入している組織はそれほど多くありませんでした。生成AIの活用も発展途上で、ハルシネーション(AIによる誤回答の生成)のリスクもあり、導入コストに見合う効果が得られるのか、不安を持つ企業様や自治体様も多かったのだと思います。

一方で、各ベンダーの技術は着実に進化しており、実用化に向けた環境が整いつつありました。神戸市様の課題や要件をヒアリングする中で、VOC分析と組み合わせた十分なサービスをご提案できると判断しました。

山本様

確かに、当初はAIによる意図理解がどの程度の精度で機能するのか、市民の皆様にどれだけ利用していただけるのか、私たちにとっても未知数でした。ただ、実際に取り組まなければノウハウや知見は蓄積できません。今後、労働人口の減少が進む中で、行政サービスにおいてもAIや自動化技術の活用は避けて通れないテーマです。その意味でも、まずは挑戦してみることが重要だと考えました。

竹内様

挑戦を後押ししたのが、VOC分析による裏付けです。問い合わせ内容を分析した上で、「どのような問い合わせがボイスボットに適しているのか」を一緒に検討できたため、期待感を持って導入に踏み切ることができました。

木本様

将来的なコンタクトセンターの開設を見据え、人だけではなくさまざまなチャネルを活用して問い合わせに対応していく必要があり、その選択肢のひとつとしてボイスボットは重要な存在だと考えました。

特に自治体の電話問い合わせ窓口は、高齢者を含め幅広い市民の方が利用されます。WebサイトやFAQを充実させても、通知が届いたらまず電話をかけるという方は一定数いらっしゃいます。そのような方々にも対応できる手段として、大きな可能性を感じました。

 

 

実証実験で、FAQを改善しながら応答精度を向上

2025年8月~10月には、株式会社AI Shift製の「AI Messenger Voicebot(当時)」を導入し、実証実験を行いました。市民の皆様から問い合わせ内容を伺い、定型的な質問であればあらかじめ用意したFAQに基づいて回答。AIで回答できない場合は、職員につなぐという方式を採用しました。

永井

実証実験では、住民税に関する問い合わせのうち、納税通知書や申告、証明書の取得方法などの定型的な質問について、自動音声で応答しました。

ボイスボットは、ツールを導入するだけでは効果を発揮できません。事前の要件整理やFAQ設計が十分でなければ、期待したほどの効果を得られないこともあります。その点、今回はVOC分析によって問い合わせ内容を詳細に把握し、FAQを体系的に整理した上で導入を進めることができました。VOC分析から着手し、その結果をボイスボットの設計に反映できることは、私たちの大きな強みだと考えています。

ボイスボットの対応イメージ図

実証実験では、住民税に関する問い合わせはボイスボットが対応し、定型的な質問はSMSでFAQのURLを送信してWebサイトへの誘導を行い、非定型的な質問は職員に連携を行った。

 

森井

実証期間は約2カ月半でしたが、その間も応対履歴を分析しながらFAQを継続的に改善しました。その結果、問い合わせ内容を正しく認識できたという方の割合は、開始当初の約50%から最終的には60%台まで向上しました。

山本様

導入前は、市民の皆様がどのように受け止められるか不安もありましたが、実証実験では大きな混乱はありませんでした。職員との対応を希望される方も想定していたほど多くはなく、ボイスボットに関するご不満の声もいただきませんでした。

木本様

応対内容を確認しましたが、市民の皆様はボイスボットの案内をしっかり聞きながら応答してくださっていました。想像以上にスムーズに受け入れていただけたという印象です。

 

 

問い合わせが増える繁忙期に、本格導入を開始

2026年6月からの本格導入に向けて、現在はFAQの拡充などの準備を進めています。まずは住民税に関する問い合わせを対象に運用を開始しますが、今後は対象税目を拡大し、住民税以外にも対応する予定です。

永井

今回の本格導入には、実証実験時よりも進化した生成AI基盤を採用しています。実証実験では、最初に利用者へ選択肢を提示して問い合わせ内容を絞り込んでいましたが、新しい基盤では最初から利用者が話す内容をAIが質問意図を把握し、適切な回答へ案内できるようになりました。必要に応じて追加質問を行うことも可能で、対話の自然さや利便性は大きく向上しています。

また、FAQの拡充にあたっては、単純に質問を増やすのではなく、本当に必要な内容かどうかを慎重に見極めることを重視しています。現場の職員の皆様が持つ知見を取り入れながら、我々が持つノウハウを活用し、神戸市様と認識を擦り合わせた上で改善を進めています。

森井

昨年の実証実験では、まず「どれだけ多くの問い合わせに対応できるか」という点に重点を置いていました。

一方、本格導入に向けては、対応範囲の拡大だけでなく、回答の質を高めることが重要だと考えています。市民の皆様が本当に知りたいことに対して、よりわかりやすく、より適切に回答できるよう、FAQや応答内容の改善を進めていきます。

木本様

前回の実証実験は、比較的問い合わせが少ない閑散期での検証でした。今回は繁忙期での本格運用となるため、問い合わせ件数も大幅に増えますし、時期特有の問い合わせ内容にも対応する必要があります。

これまでのVOC分析や実証実験で得られた知見を生かしながら、繁忙期においてボイスボットがどこまで有効に機能するのかを検証し、市民サービスのさらなる向上につなげていきたいと考えています。

 

お客さまの声

VOC分析により、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)が可能に

NTTマーケティングアクトProCXと共に、ボイスボット導入に取り組んだ感想を伺いました。

山本様

NTTマーケティングアクトProCXはネットワークが広く、VOC分析に特化した専門チームをはじめ皆さんからのサポートにより、多くの示唆をいただきました。また、VOC分析の結果に基づき、最適な施策やツールの提案、FAQの改善も伴走支援していただき、大変助かりました。本格導入後は、職員の問い合わせ対応が減り、コア業務に注力できる体制を実現したいですね。

木本様

神戸市では現在、EBPM(Evidence-Based Policy Making/エビデンスに基づく政策立案)の考え方を重視しています。

構築を検討している「神戸市税務部コンタクトセンター(仮称)」の構想についても、「問い合わせが多いから改善したい」という感覚的な議論ではなく、「どのような問い合わせが、どの程度発生しているのか」「なぜその課題が起きているのか」といった事実やデータに基づいて進める必要があります。

VOC分析は、そうした議論の土台となる取り組みです。私たちだけでは持ち得ない専門的な知見も多いため、今後もNTTマーケティングアクトProCXにはノウハウを生かした支援を期待しています。

 

今後に向けて

コンタクトセンターの実現に向けて、市民目線の改革を進めたい

神戸市税務部様の今後の展望や、同じ悩みを持つ企業・自治体へのアドバイスを伺いました。

山本様

私たちが目指しているのは、問い合わせ対応を一元化したコンタクトセンターの実現です。2028年度の開設に向け、今後も蓄積されたナレッジを活用しながら、継続的に改善を重ねていきたいと考えています。ボイスボットも導入して終わりではなく、FAQの追加やシナリオの改善を短いサイクルで繰り返しながら精度を高めていく必要があります。高速でPDCAを回しながら、職員の負担軽減と市民満足度の向上の両立を目指したいですね。

一方で、「市民の皆様が本当に知りたいことは何か」を正しく理解することは簡単ではありません。最終的には人の目で内容を確認しながら、市民目線に立った改善を続けていくことが重要だと考えています。

竹内様

今回の取り組みを通じてあらためて実感したのは、改善の第一歩は「可視化」だということです。現場では以前から「電話が多い」「対応が大変だ」という声はありましたが、それだけでは具体的な改善策にはつながりません。VOC分析によって問い合わせ内容を分類し、件数や負荷を定量的に把握することで、初めて優先順位や改善の方向性が見えてきます。

また、組織全体で変革を進めるためには、データに基づく説明が欠かせません。職員一人ひとりが誇りを持って業務に取り組んでいるからこそ、変革の必要性を客観的な根拠とともに示すことが重要だと感じています。

さらに印象的だったのは、NTTマーケティングアクトProCXが単にVOC分析やボイスボット導入を支援するだけでなく、その先の活用や成果創出まで一緒に考え、伴走してくれたことです。課題解決に向けて同じ目線で取り組み、一緒に汗をかいていただけたことを、大変心強く感じました。これからも新たなソリューションをご提案いただき、共に市民サービスの向上に取り組んでいただきたいと願っています。

 

お客様情報

神戸市行財政局税務部税務課様

人口約150万人の神戸市で、税務広報や人材育成、税務システムの管理・開発などを担う部署。DX推進にも取り組んでおり、市民サービスの向上と業務効率化の両立を目指しています。2028年度に、市民の皆様からの問い合わせの一次対応を集約する「神戸市税務部コンタクトセンター(仮称)」を開設する予定です。

 

 

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